なぜアドバイスを聞けないのか
私は、教室で生徒のご両親から相談を受けた際には、いつも誠心誠意、最もそのご家庭に合うアドバイスをさせて頂いております。
しかしながら、アドバイスを聞いても、全く違う行動を起こすご家庭があり、ガッカリさせられてしまうことがよくあります。
そして、なぜ、人はアドバイスを聞けないかと言う問いに対しては、次のような答えがあります。
理由その1:助言を受け入れると自分の立場が低くなるから
ある心理学の研究では、被験者に対して、他人に対して影響力を発揮していた場面を思い浮かべるように指示を出しました。
そう指示された人たちは、誰か他の人のアドバイスを聞こうという意欲が大幅に減退することがわかったそうなのです。
つまり「自分は強くて誰かの上に立つ人間だ」という意識があると、他人のアドバイスを聞かなくなる、ということが分かったのです。
研究者の一人であるFrancesca Gino氏は「我々は他人に対しては自分のよい良い印象を与え、知識と能力のある人間であることを示したいという欲求があります。誰かのアドバイスを受けるということは、自分たちが助言者よりも低い立場に立たされるような気になるので、助言を容易に受け入れないのでしょう」と解説しています。
確かに、アドバイスというのは一般的には、「目上の人から目下の人へ」というイメージがあります。
アドバイスを受けるというのは、一種の権力関係を明確にするということでもあるのかもしれません。
また、人は本当のことは言われたくないのかも知れません。
理由その2:自分が不快な気分になるから
他の心理学の研究でわかったことです。
被験者を2つのグループにわけての実験をしてみます。
一つのグループの人々に対しては、実験前に、男性が虐められている映像を見せ、怒りを感じるように促されました。そしてもう一つのグループでは、男性が同僚から予期せぬ贈り物を受け取る映像を見せ、感謝の気持ちを抱くように促されました。
感謝の気持ちを抱くように促されたグループの人たちは、他人からのアドバイスを受け入れる可能性が、そうでないグループの人(怒りを感じるように促されたグループ)に比べて3倍も高買ったそうなのです。
自分が、不快な気分のときには他人のアドバイスは受け入れがたいという可能性があるのかもしれません。
ただし、他の研究によると、不安を強く感じている人は、たとえそのアドバイスが悪いものであっても、アドバイスに大きく依存してしまうということもわかっているようです。
アドバイスを受けるかどうかは、かなり自分の感情に左右されるのかもしれません。
また、自分と子ども達を褒めてくれないと、優越感や気持ちの良さを感じられないことも、理由になるのかも知れません。
理由その3:自分と信頼関係がないから
別の心理学実験によると、協力関係にある人からのアドバイスは受け入れられやすいことがわかっているそうです。協力することはお互いに信頼を育み、それがさらに協力を育みます。それがポジティブな感情を高め、自然と他人の意見を尊重することを促していくのでしょう。
ということは、アドバイスを聞かない人は、その人との信頼関係がないからだということもできるでしょう。
協力関係にないといってもいいのかもしれません。
また、おだててくれないと、一体感や共感が出来ないのかも知れません。
以上の結果をまとめてみると、
専門知識を持つコンサルタントや、資格を持っているということは、人々にとってアドバイスを受け入れてもらう基準にはならないと言うことになってしまいます。
反対に、人々の潜在意識に潜り込んで洗脳する方が、確実だと言うことになってしまいます。
また、これらは全ての人々に当てはまる訳ではありません。
教養のある方々は、アドバイスに対して客観的、理性的に対応出来るのに対して、教養が無い方々こそが、アドバイスを聞けないタイプの人々に当てはまるのではないのでしょうか。