世界一の「オタク」職人
「オタク」という言葉は、今では世界共通語となってしまいました。「アニメ」「秋葉原」「コスプレ」等の言葉も同じく、世界共通の言葉となり、それらを生み出した日本の文化を世界中の人々が絶賛しているのです。
「オタク」と言うのは、ある一定の分野をトコトン愛して、最後まで徹底的に追及する「姿勢」そのものなのです。
この「姿勢」が、まさに日本のモノづくりを世界一に押し上げた原動力とも重なるのではないでしょうか。
欧米の様に、80%を合格とする不完全な完全主義では無く、あくまでも100%の完成度に拘る「姿勢」なのです。
アメリカは世界一大きなものを作り、大きくすることで効率化、経済化を可能として、夢のような製品を安価で提供し、庶民にも手が届くものとしてくれました。
それは規模の経済と言われる仕組みで、スーパーマーケット、ジャンボジェット、ビッグマック等、大きくすることで、圧倒的なパワーを見せつけ、一方でひとつ当たりの低価格を可能にして、夢のようなコストパーフォーマンスを実現して来たのでした。
言わば、量と低価格を同時に実現し、モノを溢れるくらいに提供する方法だったのです。
一方で日本人は、小さく安価で質素ながら100%の完成度を追及した結果として、高品質で頑丈でしかも美しいものづくりに努めて来たのでした。
小さくと言うのは、日本の凹凸な地形の中で生きて行く日本人にはモノを担ぐ文化が広がり、小さく軽くと言う要望が必然的だったからのようなのです。
ウォークマン、腕時計、液晶パネル、バッテリー、モーター、小型自動車等、日本人は小型で省エネ製品を作る能力が世界一なのです。
今では、世界一の技術と品質を認められた「メイドインジャパン・ブランド」なのですが、最初からNo1と認められた訳ではないのです。
ただ、日本人の頑固な「オタク」職人たちは、世界一になるまで決して満足しないのです。
「がんこ」には二つの意味が有ります。
一つ目は、「かたくなで、なかなか自分の態度や考えを改めようとしないこと。」
二つ目は、「取りついて容易に離れようとしないこと。」なのです。
課題を一つ一つ解決し、より良い製品へと進化させ、最高級の品質を極めるまで取りついて容易に離れようとしないのです。
最後まで諦めないから、たとえどんなに時間が掛かったとしても結果として一番になれるのです。
これが日本人のパワーと成功の極意そのものなのです。
自動車産業では、いまやトヨタ自動車が世界一の生産台数を誇り、ドイツのフォルクスワーゲンと鎬を削っています。ところがライバルのフォルクスワーゲン車のボンネットを開けると、そこは日本製部品で溢れていたのです。今や日本製の部品無しでは、車は完成しえないと言っても良い程なのです。
日本人のものづくりのなかで、もう一つの大きなコンセプトは、「もったいない」精神なのです。
それは、モノを大切に使うという考え方なのです。
ですから日本人は、壊れたモノを直す技術も世界一なのです。
故障した機械や自動車を再生させるのはお手の物だし、建築物を立て直す際にも、再利用できるものは最大限に生かしながら作り直すリサイクルという考え方が根付いているのです。
モノは捨てずに、出来るだけ長く使うのが基本だから、作る方は長く使えるように作り、使う方は大切に出来るだけ長く使い、もし壊れても直したり、次の製品へと再生するのです。
日本には「もったいない」で製品を大切に使う習慣が根付いてきたのです。
現在においては、古紙再生、ペットボトル再生、空き缶・空き瓶の再生などがお手の物なのです。
一方では、海水を真水に浄化し、下水を飲料水に変換する技術などにも生かされており、これらは人類の自然との共存を可能にする大切な技術なのです。
また捕獲した魚の鮮度を保つ技術や、魚の骨を柔らかく加工して、骨を取らずに食べられる技術など画期的で自然のエネルギーを生かす技術が次々に発明されて来ているのです。
これらは、世界の食生活の常識を次々に塗り替えるだけでなく、同時に健康や長生きといった成果にも繋がる画期的な試みとなっているのです。
トヨタのランドクルーザーは、人がなかなか入れない僻地で車が壊れても直ぐに修理が出来るように、新車が出ても同じ部品を使うように作られているそうですが、ドイツのフォルクスワーゲンは大衆車のゴルフから系列スポーツカーメーカーのポルシェまで全ての車種で同じ部品を使う事を基本としています。
全車種のデータにおいても、単一データウエアハウスと単一システムで一元管理されているから、問題の解決がとてもし易いのです。こればかりは、日本も真似をしなければ、真の世界一になる事は出来ない考え方なのだと私は考えます。
